PF(5th)

誰を選ぶか

 教室を占拠したテロリストが、銃を片手に僕らに告げる。
「お前たちの中から、殺されてもいいやつを選べ」
 教壇の傍には、かつて山田先生だったものが転がり、床を汚している。選ばれれば自分もそうなるのだろう。既に教室は恐怖で支配され、誰も声をあげようとはしない。
 僕は静かに右手を上げる。これをチャンスと考えない連中の程度が知れる。
「なんだ? 誰にするかの推薦か?」
「はい」
「じゃあ言ってみろ。ついでにどこに座ってるやつか教えろ」
 皆が凍りつくのがよく分かる。「待てよ! お前何を――」声をあげたのは鈴木だったが、立ち上がるより早く射殺された。「なに勝手に立ってんだ。クソガキ」いい気味だ、とは思わない。たとえ彼が、僕をずっといじめてた奴だとしても。
「殺されてもいいのは、僕です。クラスの皆も、そう思っているはずです」
 なるほどねえ、とテロリストは口元を歪める。ひととおり教室の反応を確かめて、納得したように頷く。
 間違いない。これが正解だ。誰からも必要とされない自分は生きていていい人間なのか。それは、ずっと考えてきたことだ。
「よし、お前が外のマスコミに伝えてこい。要求は死刑囚の釈放。名前は××××。以上だ」
 殺されてもいいやつを人質にしても仕方無いからな。テロリストは付け加える。
 確かにその通り。これはチャンスだった。自分は生きていていい人間なのか。それは生き延びてから、ゆっくり考えていくとしよう。少なくとも数日は、マスコミが僕を必要としてくれるだろうから。
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