PF(5th)

アイドル

 こんなの若いうちだけでしょ、と吐き出してみたところで、自分の中にある羨望が消えてくれる訳でもない。高校時代のクラスメイト。特に目立つ子でも無かったしアイドルになりたいなんて聞いたこともなかった。ずっと温めてきた夢なんだろう。それが叶った。だから羨ましく思うんだろうか?
 自分がなりたいもの。なりたかったもの。いま居る場所がそうなのかと聞かれても、うまく応えられない。就職が決まったときに喜んだのは確かだ。親も喜んでくれた。周りも驚いてくれた。希望していた業種でもあった。もちろん不満を挙げればきりが無い。こないだは一カ月かけた企画書をゴミ箱に放り捨てられたばかり。「伝わんないんだよね」「何かこうインパクトがさ」「何か言いたいことあんの? 言ってみれば?」仕事には慣れてきた。少しずつ、諦めるのも上手くなる。
 ただ、ちやほやされたいだけなのかもしれない。認められたい。褒められたい。誰かに必要とされたい。誰かに必要とされる自分でありたい。ただそれだけ。子供みたいで馬鹿みたい。
「がんばれ」
 テレビに向かって、ひとつ。高校時代のクラスメイト。アイドル。偶像。幻想。華やかな舞台と煌びやかな世界。そこには不満も不安も苦労も無い――なんてことは思わない。当たり前。みんな一緒で変わらない。報われるのは一瞬で一部。分かってる。当たり前。分かっているのに、そのまぶしさに胸が詰まる。
「がんばれ」
 絞り出す。もう一度。彼女に。そして報われない自分に。
 きっと呪いはこんなふうに託される。これからも、少しずつ。
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